結論:フルマラソン後にプロテイン飲料が必須という根拠はありません。食事で必要量をとれるなら、粉末を追加する必要はありません。高負荷で練習する競技者向けの一般目安として、オーストラリア国立スポーツ研究所(AIS)は1日体重1kg当たり1.2〜1.6g、1回0.3〜0.4g/kgを3〜5回の食事・間食に分ける考え方を示しています。ただし、これは「マラソン直後だけの処方」ではなく、病気や食事制限のない競技者の普段の配分を考える目安です。
体重別に何gになる?
計算は「体重×係数」です。例えば体重60kgなら、1日合計は60×1.2〜1.6=72〜96g、1回は60×0.3〜0.4=18〜24gです。1回量を4回とると72〜96gになり、1日の範囲と一致します。実際には毎回同じ量でなくてもよく、食品表示にある「1食当たりのたんぱく質」を合計します。

| 体重 | 1日合計 1.2〜1.6g/kg | 1回 0.3〜0.4g/kg |
|---|---|---|
| 50kg | 60〜80g | 15〜20g |
| 60kg | 72〜96g | 18〜24g |
| 70kg | 84〜112g | 21〜28g |
| 80kg | 96〜128g | 24〜32g |
出典はAISのIsolated Protein Supplementsです。AISは、運動後のたんぱく質合成が少なくとも24時間続くため、合計量だけでなく1日の配分も重視しています。したがって「ゴール後30分を逃したら意味がない」と焦るより、食欲と胃腸の状態に合わせて、その後の食事へ戻す方が実践的です。
マラソンの研究では何が分かっている?
レクリエーショナルランナーを対象にした2018年の研究は、炭水化物+たんぱく質と炭水化物のみを比較しました。レース中の比較は各8人、ゴール直後の比較は各4人という非常に小さな研究です。24時間後には意味のある差がなく、72時間後の主観的な疲労感や筋肉痛の一部で、炭水化物+たんぱく質群が良い可能性を報告しました。
この結果だけで「マラソン後はプロテインを飲めば回復が速い」とは言えません。人数が少なく、使用量の最適値を決める試験でもなく、食事全体やエネルギー摂取の影響を分離しきれません。既存の走行再開の研究整理と同じく、血液マーカーや筋肉痛の一部だけで、次の高強度練習が安全と判断することもできません。
最新の大規模レビューが残した注意点
2025年掲載のベイズ多階層メタ解析は75研究、1,206人の競技者をまとめました。たんぱく質を含む補給で持久力や筋力などに有意な結果が見られた分析はありましたが、著者らは有意な結果がすべて、介入群と対照群でエネルギー摂取量をそろえていない研究から得られたと報告しています。つまり、たんぱく質固有の効果なのか、単に摂取エネルギーが増えた効果なのかを分けにくいということです。
同レビューが示す「追加のサプリメント量」を、そのまま市民ランナーの推奨量として採用するのは避けます。日常の食事から既に十分なたんぱく質をとっている人へ、さらに大量の粉末を足す根拠にはなりません。
糖質の代わりにプロテインを飲めばよい?
代わりにはなりません。運動後8時間以内の筋グリコーゲン回復を調べた2021年の系統的レビュー・メタ解析は、21報から29試験、246人を解析しました。十分な炭水化物にたんぱく質を加えても、炭水化物のみより筋グリコーゲン再合成速度は改善しませんでした。著者らは、短い回復時間で次の激しい運動をする選手は、まず定期的な炭水化物摂取を優先すべきだと結論しています。
フルマラソン後は、たんぱく質だけでなく、糖質、水分、電解質、総エネルギー、睡眠を一緒に考えます。レース中の糖質量を振り返る場合は、1時間当たりの糖質補給の計算を参照できます。
食事とプロテイン製品をどう選ぶ?
- まず食品表示を足す:主食・乳製品・卵・魚・肉・大豆製品など、食べられる食品の「1食当たり」を合計する。例えば10gの食品と12gの食品なら合計22gです。
- 粉末は便利さで判断:移動中で食事を用意できない、食欲が弱く固形物が難しいなど、食品で補いにくい場面の選択肢です。AISもfood-first(まず食品)を基本にしています。
- 糖質を削らない:「高たんぱく」にするため主食や果物を極端に減らすと、マラソンで消費したエネルギーと糖質の補充を妨げる可能性があります。
- 製品の混合成分を確認:カフェイン、ハーブ、刺激成分、糖アルコールなどが入る製品があります。競技者は第三者認証の有無とアンチドーピングリスクも確認します。
この計算をそのまま使わない方がよい人
腎臓病などでたんぱく質制限を受けている人、妊娠中・授乳中、摂食障害の既往がある人、アレルギーがある人、医療者から特別な食事指示を受けている人は、一般的な競技者向け係数を自己判断で使わないでください。強い吐き気、尿が出ない、茶色い尿、意識の異常などがあれば、栄養計算より医療相談を優先します。
まとめ
マラソン後に必要なのは「必ずプロテイン1杯」ではなく、1日を通じた食事の回復です。一般目安を使うなら、1日1.2〜1.6g/kg、1回0.3〜0.4g/kgを体重から計算し、食品表示で実際の摂取量を確認します。60kgなら1日72〜96g、1回18〜24gが計算例です。小規模なマラソン研究と最新レビューは、プロテイン固有の効果を強く断定できる段階ではありません。糖質と総エネルギーを置き換えず、食品で足りない場面だけ製品の利便性を使ってください。
資料確認日:2026年9月29日。この記事は一般的な研究解説であり、診断や個別の栄養処方ではありません。サムネイルはAI生成の概念イラストで、実在の選手や大会を示しません。本文図は自作の概念図です。

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