マラソンの給水量は何mL?発汗量の計算例と飲み過ぎを避ける考え方

マラソンの給水をテーマに発汗量の測定と飲み過ぎの注意を示す自作イラスト ランニングの科学

マラソン中に何mL飲めばよい? 全員に共通の固定量はありません。練習時に近い気温・ペースで体重変化と飲んだ量を測れば発汗量の目安は得られますが、その数字をそのまま「毎時飲むべき量」にしないことが大切です。暑さ、個人差、飲める機会、のどの渇き、胃腸の許容度を考え、体重が増えるほどの過剰な飲水を避けます。米国スポーツ医学会(ACSM)のポジションスタンドは個別化を勧め、運動関連低ナトリウム血症のレビューは渇きに応じた飲水と過剰飲水の回避を強調しています。

練習で発汗量を概算する

同じ条件の練習前後に、できれば乾いた衣服に替えるなど測定条件を揃えて体重を量り、飲んだ飲料と排尿量を記録します。概算式は「(運動前体重 − 運動後体重)kg + 飲料L − 尿L」を運動時間(時間)で割ったL/時です。ここでは水1Lを約1kgとする便宜的な換算です。全米アスレティックトレーナー協会の声明もこの測定法を示します。

概念図:運動前60.0kg、運動後59.4kg、飲料0.4Lなら60分の発汗量の概算は約1.0L
自作の概念図。尿量ゼロ、60分の練習を仮定した教材用の計算で、飲水の処方ではありません。

例:運動前60.0kg、60分後59.4kg、飲料0.4L、排尿なしなら、体重差0.6kg+飲料0.4L=発汗量は約1.0L/時です。尿が0.1Lなら約0.9L/時になります。飲料を足し忘れて体重差だけを発汗量と見なすと、この例では過小評価します。一方、汗を含む衣服、排尿の記録漏れ、運動中の代謝による体重変化などで誤差が出ます。暑い日の値を涼しいレースに機械的に当てはめないでください。

「発汗1Lだから1L飲む」とはしない

発汗量は準備する飲料や給水機会を考える材料であり、汗を全量置き換えるノルマではありません。ACSMは過度な脱水によるパフォーマンス低下にも注意を促します。一方、低ナトリウム血症のレビューによると、長時間の運動で水分を飲み過ぎることには重大な危険があり、塩分補給だけでは過剰飲水の危険を打ち消せません。両者の強調点は異なるため、「何mL/時」を単一の正解として広めるのは避けるべきです。

まず通常の食事と飲水でスタートし、練習で給水所間隔に近い条件を試します。のどの渇きを無視して大量に飲み続けたり、練習時より体重が増える飲み方を目標にしたりしないでください。極端な暑さ、長時間のレース、持病や服薬がある場合は一般向け記事だけで個別の安全量を決めず、医療者やスポーツ栄養の有資格者に相談を。運動中・後に強い頭痛、混乱、嘔吐、意識障害などがあれば水分を追加して様子を見るのではなく大会医療班・救急へ連絡してください。

糖質の計算とは別に管理する

スポーツ飲料は水分と糖質の両方に数えます。たとえば飲料500mLに糖質30gが含まれるなら、飲料として500mL、糖質として30gをそれぞれ記録します。必要な糖質を満たそうと飲料を無理に増やすのではなく、ジェルなどと組み合わせて練習で胃腸との相性を確認してください。糖質量の考え方は、関連記事「マラソン中の糖質補給は1時間に何g?」で計算例を示しています。

レース前に確認する「給水の試し方」

ここで求めた発汗量は、レース当日に守るべき飲水量ではなく、準備を始めるための比較用の記録です。次の順番なら、数字だけを追って飲み過ぎることを避けながら、給水所で迷いにくくなります。

  1. 条件を残す:気温、湿度の目安、走行時間、ペース、着衣を同じメモに記録します。暑い日の60分走の値を、涼しい日のフルマラソンへそのまま移しません。
  2. 給水機会を再現する:大会の給水所に近い間隔で、少量ずつ飲めるかを練習で試します。止まらずに飲めない、胃が張るなどの反応も結果です。
  3. 翌朝まで反応を見る:体重が運動前より増えていないか、強い頭痛・吐き気・混乱がないかを確認します。異常な症状があれば自己調整を続けず、医療者や大会医療班に相談します。
  4. 次回に一つだけ変える:飲料の量、糖質、塩分、ジェルのいずれかを一度に大きく変えず、何が胃腸や体調に合わなかったのかを判別できるようにします。

たとえば、発汗量が約1.0 L/時という記録でも、「1.0 L/時を飲む」ではありません。給水所の間隔、のどの渇き、飲める量、胃腸の反応を並べて、無理なく飲める範囲を練習で見つけるという使い方です。

水分・糖質・ナトリウムは別々に記録する

スポーツ飲料を使う場合でも、水分量、糖質量、ナトリウム量は同じ数字ではありません。糖質はマラソン中の糖質補給の計算例、ナトリウムは発汗量から損失を見積もる記事を別の欄として確認してください。汗を多くかいたからといって、水分・糖質・塩分を一緒に増やす判断にはなりません。

補給を増やしたいときほど、まずは普段の練習でジェルと飲料の組み合わせを試し、胃腸の反応を記録します。マラソン向けの腸トレーニングの考え方も、給水計画を実走可能な計画へ直す際の補助になります。

編集注:本記事は文献に基づく一般向けの解説で、個人の診断・処方や実走試験ではありません。確認日:2026年9月17日。

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