マラソンや長距離レースの前夜に眠れなくても、その一晩だけで結果が必ず悪くなるとは言えません。短い睡眠が数晩続く場合と、緊張で一晩だけ寝つきが悪い場合は分けて考えましょう。当日は眠気や体調、安全に注意し、前夜の数字だけでレースを諦めたり、急に新しい対策を試したりしないことが現実的です。選手の睡眠に関する専門家コンセンサスは、1〜3晩の部分的な睡眠制限が競技成績へ与える影響はまだ明確でないとしています。
大会前に眠れないのは珍しいこと?
オーストラリアのエリート選手283人を対象とした質問紙調査では、過去1年の重要な大会前に少なくとも一度「普段より眠りが悪かった」と答えた選手が64.0%でした。主な訴えは寝つきにくさです。ただし、これは自己申告による横断調査で、マラソン市民ランナーの割合でも、睡眠不足がタイムを何分遅くするかを測った結果でもありません。「自分だけが失敗した」と思い込まないための参考値として読むのが妥当です。
研究から言えること、言えないこと
選手を対象とした2023年の系統的レビューは、睡眠への介入と客観的な競技・回復指標を扱った25研究を採用しました。就寝時間を増やす介入と昼寝は、検討された方法の中で比較的よい結果が多い一方、著者らは質の高い証拠が限られるとしています。対象競技や測定法もさまざまで、この結果から「前夜に何時間寝ればマラソンで何分速くなる」とは計算できません。
また、専門家コンセンサスは、一律の「全員が7〜9時間」という目標より、本人の普段の必要量や状況に合わせる考え方を勧めています。一晩まったく眠らない場合と、緊張で普段より少し短くなった場合を同一視しないことが大切です。

前の数日・前夜・当日で、何を変える?
前の数日:普段の睡眠を守る
仕事や移動で寝る時間を削らないよう予定を組みます。大会に合わせて就寝時刻を急に大きく変えるより、自分の通常の睡眠習慣を保つことから始めます。上記レビューは睡眠時間を延ばす介入に可能性を示しますが、市民ランナーが数日だけ「寝だめ」すれば効果が出るとまでは示していません。練習量を減らす時期の考え方は既存のテーパリング解説も参照してください。
前夜:眠ろうと力まない
持ち物、会場への経路、起床時刻を先に確認し、時計で睡眠時間を繰り返し計算しないようにします。寝つけない場合も、翌日の段取りを何度もやり直すより休息に時間を使います。普段使っていない睡眠薬やサプリメントをレース直前に自己判断で試すことは避けてください。薬を使用中なら処方医の指示を優先します。
当日の朝:体調と安全を優先する
眠気が強い、めまいがある、体調が普段と明らかに違う場合は、移動や競技を含め安全側で判断してください。眠れなかった不安を取り返そうとして序盤だけ速く走るのは得策ではありません。朝食の計画は普段試した範囲にとどめ、カフェインなどの摂取量を急に増やさないようにします。
よくある疑問
前夜に5時間しか眠れなかったら、欠場すべき?
時間だけで欠場の要否は決まりません。睡眠研究からその個人のレース成績や安全を判定する閾値は示せません。眠気の程度、体調、持病、移動手段を見て判断し、判断に迷う症状があれば医療者に相談してください。
昼寝で埋め合わせできる?
系統的レビューでは昼寝の介入にも有望な結果があります。ただし、採用研究は競技・実施時間・評価指標が異なります。自分が普段昼寝をしないなら、レース直前に新しい長時間の昼寝を「必須」にする根拠はありません。
資料確認:2026年9月19日(日本時間)。この記事は競技者研究の読み解きと一般的な大会準備を扱います。持続する不眠や強い日中の眠気については医療機関に相談してください。


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