私が今回レビューする**On Cloudsurfer Max(クラウドサーファー マックス)**は、2025年7月に発売されたOnの最新ランニングシューズです 。発売直後にこのモデルを入手し、実際に数週間にわたってロードランニングで試し履きしてみました。最大級のクッションを謳うこのシューズ、その履き心地やパフォーマンスは一体どのようなものなのでしょうか?本記事では、シューズの特徴やスペック、実際の走行感から、他モデルとの比較、初心者からプロまで各レベルのランナーへの適性までを詳しく解説します。
実際にCloudsurfer Maxを履いてロードランニングをテストした様子。オンらしい独特のソール形状とボリューム感が目を引く。
Cloudsurfer Maxとは?最新モデルの概要

Cloudsurfer Maxは、その名の通りOnの「Cloudsurfer」ファミリーに新たに加わったマックスクッションモデルです 。前作にあたる**On Cloudeclipse(クラウドエクリプス)**の後継として位置付けられており、ラインナップ名を整理するため「Cloudeclipse」から「Cloudsurfer Max」に改称された経緯があります 。ロングランを快適に走るために設計されたモデルで、メーカー公式は「長距離ランに特化した設計」「この上なくスムーズな走り心地」を実現したシューズとうたっています 。
主なスペック: Cloudsurfer Maxの基本スペックを以下にまとめます。
- 発売日: 2025年7月17日(木)
- 定価: 23,100円(税込) (海外価格 $180 )
- 重さ: メンズ約292g(サイズ不明)/ウィメンズ約258g (※筆者実測: メンズ27cmで約310g程度)
- スタックハイト: ヒール37mm/前足部31mm(ドロップ6mm)
- カテゴリー: 中立(ニュートラル)タイプのデイリートレーナー(長距離・リカバリーラン向け)
- ミッドソール: Helion™スーパーフォーム+CloudTec Phase(クラウドテック フェイズ)二層構造
- アッパー: エンジニアードメッシュ+フラットニット履き口(ブーティ構造のガセットタン採用)
- アウトソール: ラバー(中央に溝を配置したパターン)
Cloudsurfer Maxは最大37mm厚のソールを持ち、高スタックながらも安定性を重視した設計が特徴です 。On独自のCloudTec(雲のような中空クッション構造)を進化させたCloudTec Phaseクッションを二層に重ね、Helionフォーム素材と組み合わせることで、着地から蹴り出しまで滑らかにつなぐクッションを実現しています 。一方でカーボンやナイロンのプレート(Speedboard)は搭載せず、柔軟性と自然な足運びを重視した構造になっています 。
また、サイズ展開も豊富でメンズは25.0cm〜33.0cm(US7〜15相当)、ウィメンズは22.0cm〜29.0cmと大足のランナーにも対応しています 。私は通常サイズ(27.0cm)で購入しましたが、サイズ感は**ほぼ標準どおり(True to Size)**に感じました 。
アッパーとフィット感 – 履き心地は?幅広足でもOK?

まず履いてみて驚いたのは、つま先周りのゆとりです。Cloudsurfer Maxのトゥボックスは非常に広く、足指のスペースが十分に確保されています。私の足はやや幅広ですが、締め付けや圧迫感はなく幅広の足でも問題なく履けるフィットでした 。足入れ直後の「ルーミー(広々)」な感触は、多くのテスターも指摘しており、特に爪先の開放感(トースプレーの余裕)が好評です 。
Cloudsurfer Maxを上から見た様子。エンジニアードメッシュのアッパーは柔軟で足馴染みがよく、トゥボックス(つま先部分)にも十分な空間がある。
アッパー素材には最新のエンジニアードメッシュが用いられ、触った感じは薄手で柔らかく、とても通気性に優れています 。実際、真夏の蒸し暑い朝に履いても足が蒸れにくく、風通しの良さを実感しました。メッシュの内側には必要最低限の補強が施されており、全体として軽量でクリーンな仕上がりです。デザインも洗練されており、派手すぎないカラーリングながらオンらしいスタイリッシュさが光っています 。
履き口周り(ヒールカーラー部分)はフラットニット素材になっており、薄く見えますが内側にパッドが入っていてアキレス腱周りを優しく支えてくれます 。タン(シュータン)はガセットタン仕様(両サイドがアッパーとつながった靴下状構造)で、柔らかいニット生地+適度なパッド入り。足の甲を包み込むような感触で、タン上部には小さなプルタブ(取っ手)も付いており、履く際に引っ張ることができます 。ただしこのかかと側のプルタブは小さすぎて指をかけにくいのが玉に瑕でした 。
全体的なフィット感としては、足全体を優しく覆うようなソフトなホールド感があります。ボリュームのあるアッパーですが、私はシューズ内で足が遊ぶこともなく快適に感じました。特筆すべきはシューズタンとシューレースの工夫で、ガセットタン+肉厚なヒールパッドのおかげで足首まわりまでしっかりホールドされます 。私は通常どおりの締め付けで十分フィットしましたが、人によっては甲の高さに若干余裕があり、アッパーのボリュームがやや大きめと感じる向きもあるようです 。もし細身の足で「余る」と感じた場合、中敷き(インソール)を入れ替えるなどで微調整すると良いでしょう。
一方で、唯一気になったのがシューレースの締め具合の調整です。Cloudsurfer Maxでは伝統的な穴(アイレット)ではなく布製のループ状アイステイにシューレースを通すデザインになっています。見た目はすっきりしているのですが、このループが滑りやすく、一気に上部だけ締めても甲側(下部)の緩みが残ってしまうのです 。私も初回はフィットを出すのに少し手こずり、何度か結び直しました。同様の指摘は他のレビュアーからもあり「完璧な締め付けを得るのがほぼ不可能」とまで辛口に評する声もあるほどです 。コツとしては、一段一段のループ部分で順番に締め込んでいき、最後に結ぶと緩みにくくなります。それでも靴紐が長めなので、二重結びにして余りを処理しないと走行中バタつく点は注意が必要です 。
以上のように、Cloudsurfer Maxのアッパーとフィット感は、広めのラストと上質なメッシュによる快適性が光ります。足入れの容易さと内側のソフトな履き心地はOnならではのクオリティで、大半のランナーに合う汎用性の高いフィットと言えるでしょう。特に幅広足の方や、長時間履いてもストレスの少ないシューズを求める方には好印象を持ってもらえるはずです。一方で、フィットの調整には一手間かかる可能性があるため、初めて履く際はしっかり靴紐を締め直してベストなポイントを探すことをおすすめします。
クッション性能とソールテクノロジー – “マックス”の名に恥じないか?

Cloudsurfer Max最大の特徴であるソールユニットについて掘り下げます。ミッドソールにはHelionスーパーフォームと呼ばれるOn独自開発の樹脂系フォームが用いられ、その中にCloudTec Phaseという中空のクッションポッドが組み込まれています 。CloudTec Phaseはポッド形状と配置を計算し、着地時に雲のように順々に潰れて衝撃を吸収しつつ、前方への推進を促す構造です 。Cloudsurfer MaxではこのCloudTec Phaseポッドが上下二層に配置されている点が新しく、見た目にもソール側面に大小二段の“クラウド”が確認できます。
Cloudsurfer Maxの横から見た図。ミッドソール内に雲のような中空ポッド(CloudTec)が二層に重なっているのがわかる。見た目のボリューム通り、高いスタック高を誇る。
公式いわく、この二層構造に柔らかいフォーム素材を組み合わせることで「この上なくスムーズ」かつ「最大級のクッション」を実現したとされています 。しかし実際に走ってみると、そのクッションの感触は意外にも硬めでした。私自身、最初の数キロは「想像よりもしっかりした足裏感覚だ」と感じています。同様の感想は各種レビューでも散見され、Cloudsurfer Maxのミッドソールは「他社のマックスクッションシューズと比べてかなり締まった(硬めの)乗り心地」との評価が多数です 。事実、本モデルの足裏の感触はOnの原点回帰とも言われ、近年市場に溢れるフワフワ柔らかいシューズとは一線を画しています 。
具体的には、着地時にCloudTecポッドがしっかり潰れて衝撃吸収はしてくれるものの、足が沈み込むような「モチモチ」「フワフワ」感は少なく、どちらかというと弾力性のある硬めのクッションです 。このため地面からの反発(エナジーリターン)は感じられ、ペースを上げた際にはシューズがしっかり押し返してくる**“張り”のようなものがあります 。私も試しにペース走でキロ当たり1分近くスピードを上げてみたところ、かえってソールの剛性感が心地よく、推進力を得やすく感じました。ゆっくりジョグよりも少しペースアップした方がスムーズに転がる**印象です 。
では、このクッションは「マックス」の名に恥じないかと言われれば、定義次第と言えます。確かにスタックハイトこそ37mmと厚めですが、昨今の他ブランド最高クッションモデル――例えばHOKAのBondiやNIKEのInvincibleのように足が沈むような極柔クッションを期待すると肩透かしを食らうでしょう 。Cloudsurfer Maxは高さより安定感を重視した路線で、極厚シューズにありがちな横ブレや不安定さを排除しています 。実際履いていても、大きなソールの割に着地時のぐらつきは少なく、安定して体重を支えてくれる印象でした。
面白いことに、あるレビュアーは「このシューズのクッションは多くのランナーには硬すぎるかもしれないが、最近の柔らかすぎる靴に飽きた人には理想的だ」とコメントしています 。まさに、私自身も柔らかさより安定感や反発感を好むタイプなので、このしっかりした足裏感覚には好感を持ちました。一方で、体重の軽いランナーでは十分にソールを圧縮できずクッションを感じにくい可能性があります。実際「体重の重いランナーならクラウドがもっと潰れて恩恵を受けられるだろう」という指摘もあります 。私(体重約65kg)の場合、ゆっくり走るとかなりカチッとした感触でしたが、体重70~80kg以上のいわゆる“大柄なランナー”であればより柔らかさを感じるかもしれません。
Speedboardの廃止: 先代Cloudeclipseではミッドソール内にOn独自の硬質プレート「Speedboard(スピードボード)」が搭載されていましたが、Cloudsurfer MaxではこのSpeedboardが取り除かれています 。Speedboardは推進力を高める反面、シューズを硬直させる作用もあるため賛否ありました。私自身Cloudeclipseは未体験ですが、ユーザーレビューでは「露出したSpeedboardがギシギシと騒音の原因になった」という苦情が散見されました 。Cloudsurfer MaxではSpeedboardがなくなったことで、その不快な軋み音が解消されており、静かでスムーズな走行ができます。一方、「Speedboardがなくなったことで前作より反発が減った」という意見も一部あります が、私の体感ではHelionフォームとCloudTec Phaseだけでも十分に推進力は得られており、特に不満は感じませんでした。むしろ前足部のしなりが自然になり、フォアフットからトゥオフへの流れがスムーズになったように思います。
アウトソールとグリップ: Cloudsurfer Maxのアウトソールには耐久性の高いラバーが広い面積で配置されています。前足部と踵部にゾーン分けされたパターンで、中央には縦方向の大きな溝(チャネル)が設けられています 。この溝はデザイン上の特徴でもあり、着地から蹴り出しへの体重移動をガイドしつつ、ソールの軽量化にも寄与しているそうです 。実際にアスファルトやトラック、未整地の河川敷など様々な路面で試しましたが、グリップは非常に良好でした。特に雨上がりの濡れた路面から乾いた路面への移行でも滑る感じはなく、安心して踏み込めます 。ソールのパターン自体派手さはありませんが、十分なトラクションを発揮してくれます 。
耐久性についても、約300マイル(480km)程度の走行に耐えるという意見があり 、一般的なランニングシューズの寿命はしっかり確保しているようです。私も現時点で100kmほど走った限りでは、アウトソールのラバーに大きな減りやスリ減りは見られません。強いて言えば前足部外側と踵外側に軽微な摩耗が出始めていますが、これは私の着地癖によるものでしょう。
注意点を挙げるとすれば、アウトソール中央の溝に小石が挟まる可能性です 。実際、砂利道を走った際に小さな石が溝に挟まってチラチラ音がしたことがありました。ただし溝が大きい分、指で簡単に取り除けますし、頻繁に起こるわけでもないので大きな欠点ではありません。全体として、Cloudsurfer Maxのアウトソールは耐久性とグリップ、そして安定性を高いレベルで両立していると評価できます。
走行性能・ライドフィール – ペースや距離による印象の変化

実際にCloudsurfer Maxを履いて様々なペース・距離を走ってみた感想をまとめます。
ゆっくりペース・ジョグ: 最初にキロ6〜7分のゆったりジョグで試したところ、前述のように足裏の硬さが真っ先に感じられました。クッションは効いているものの沈み込む感じが少ないため、地面からのインパクトがダイレクトに伝わる印象です。ただ「硬い=衝撃が和らいでいない」わけではなく、不快な突き上げはありません。着地衝撃自体はCloudTecがきちんと受け止め、膝や脚へのダメージは抑えられていると感じます。実際、フォーム計測データでも着地時の衝撃加速度は他のクッショントレーナーと同等レベルでした。足裏で路面を感じる感覚があるぶん、フォームを正して効率よく走ろうという意識が働くのも良い点です。
ペース走・テンポ走: 次にキロ5分〜4分台までペースを上げてみました。面白いことに、ペースを上げるほどにシューズが軽快に感じられるのです。ミッドソールの剛性感が推進力に変わり、着地から蹴り出しまでの動きがスムーズに繋がります 。CloudTec Phaseの順次圧縮によるロッカー効果が現れ、足が勝手に前に転がっていくような感覚すらありました 。私は普段4分/km程度までしか出しませんが、その範囲内ではシューズの重さもさほど気にならず、テンポ走でも十分使えると感じました。WearTestersのレビューでも「ペースアップ時には俊敏さを感じ、スムーズに走れた」と評価されています 。一方、Believe in the Runのレビュアーは「この靴はテンポシューズではなく、速く走ろうとすると余計に労力を要した」と述べています 。おそらく、より高速域(3〜4分/km)になるとさすがに重量と反発不足を感じるのかもしれません。総合すると、適度なスピードまでなら十分対応できるが、スピード特化シューズではないという立ち位置です。
ロングラン(距離走): 20kmを超える距離(私の場合は25km走)でも試しました。序盤〜中盤は安定した履き心地で淡々と走れましたが、後半にかけて脚の疲労がじわじわと出てくるのを感じました。特に膝下から足首周りにかけて、「もう少しクッションが欲しいかも」と思う場面がありました。実際、他のテスターの中には「14マイル(約22.5km)のロングランで後半6マイルは体中が痛くなってきた」と語る方もいます 。前週にNikeの柔らかいクッションモデル(Vomero + ZoomXフォーム搭載)で走ったときは疲労感が少なかったのに比べ、Cloudsurfer Maxではクッション性能と保護性がやや不足していると感じたそうです 。私自身も、例えばHOKAのBondiやASICSのGEL-Nimbusのような「とことん脚を守ってくれるシューズ」と比べると、Cloudsurfer Maxは良くも悪くも脚への刺激を残すタイプだと感じました。ただし、それゆえ走り終えた後の足裏感覚がしっかり残り、トレーニングした実感があるとも言えます。言い換えれば、Cloudsurfer Maxはロングランで脚筋力を養うのにも向いているでしょう。
安定性・コーナリング: ソールの接地面が広く安定しているため、コーナーを曲がる際のグラつきは少ないです。私はオーバープロネーション傾向(着地時に足が内側に倒れやすい)が少しありますが、本シューズでは特に不安定さを感じませんでした。ミッドソール外側の張り出し(フレア形状)と、6mmという適度なヒールドロップが作用しているのか、着地から蹴り出しまで足がスムーズに動く印象です 。ヒールストライクでもフォアフット着地でも違和感なく使えました。
静音性: 前述のとおりSpeedboardがないためか、走行音は比較的静かです。Onの過去モデルで指摘されていたような「キュッキュ」とか「パキパキ」といった機械的な音は皆無でした。ミッドソールの内側に細かな溝やテクスチャを入れてあることで、クラウドポッド同士が擦れる音を抑えているようです。深夜や早朝の静かな住宅街を走っても気が引けないのは嬉しいポイントです。
総じて、Cloudsurfer Maxの走行性能は**「安定感と適度な反発を備えたオールラウンドクッショントレーナー」という印象です。ゆっくりジョグから中強度のランニングまで、幅広いペースで安心感ある走りを提供してくれます。いっぽう、「マックスクッション」と銘打たれていますが実際は現代的な超厚底シューズほどのクッション感ではなく** 、良く言えば地面との一体感、悪く言えば長距離での保護性能はほどほどといったところです。ただ、このバランスこそがOnらしさとも言えるでしょう。実際、あるレビューでは「最新の他社マックススタックシューズほどではないにせよ、Onファンには馴染みやすい一貫した足裏感覚だ」と述べられています 。私も含め、元々Onのシューズを好むランナーであれば、このCloudsurfer Maxの乗り心地にはすぐ慣れて心地よさを見出せるはずです。
他モデルとの比較 – Cloudsurfer Maxはどれくらい厚底?競合シューズは?

シューズ単体の特徴を見てきましたが、他のモデルと比較するとCloudsurfer Maxの位置づけがより明確になります。ここでは、On社内の他モデルや他社の競合モデルと比べてみましょう。
On Cloudsurfer (通常モデル)との比較: Cloudsurfer Maxと対になる存在が、同じシリーズの通常版Cloudsurferです。2023年に登場した最新Cloudsurfer(第2世代)は、CloudTec Phaseを初搭載し話題となりました。通常版Cloudsurferはスタックハイトが抑えめで、重量もMaxより軽く、クッションは柔らかめでした 。実際にCloudsurfer(通常版)をテストしたあるレビュアーは「ソフトで気持ちいい乗り心地だが、自分には長距離には柔らかすぎて短めのラン専用になった」と述べています 。一方、Cloudsurfer Maxはその名の通りソールを厚くしてクッション性と耐久性を増したモデルであり、長距離ランに適した相棒になることを目指して開発されています 。柔らかさでは通常版に劣るものの、長距離でもへたらず安定した走行ができる点で差別化されています。要は、Cloudsurfer=日常用デイリートレーナー、Cloudsurfer Max=ロング走対応のマックスクッション版という住み分けです。
On Cloudmonsterとの比較: Cloudmonster(クラウドモンスター)は2022年に登場したOnの厚底クッションモデルで、当時On史上最大クッションと謳われました。スタック高は30mm強程度でCloudsurfer Maxよりやや低いですが、Helionフォームを分厚く積み、Speedboardも搭載したモデルです。私の印象ではCloudmonsterは柔らかさと反発のバランスが良いシューズでしたが、Cloudsurfer Maxと比べるとクッションの質感が少し異なります。MaxはCloudmonsterよりさらに安定性寄りで硬めに感じました。実際、複数のレビュアーから「Cloudsurfer Maxの感触はむしろCloudeclipseよりCloudmonsterに近い」という声が出ています 。特にCloudmonster 2(第2世代)も試した人からは、「Cloudsurfer MaxもCloudmonster 2も全体的に少し硬すぎる」という指摘があり、両者に共通するフィーリングがあるようです 。つまり、Cloudmonsterシリーズが好きだった人にはCloudsurfer Maxも馴染みやすく感じられるでしょう。一方で、Cloudsurfer Maxはより新しいCloudTec Phase採用により着地から蹴り出しのスムーズさが向上しており、Speedboard非搭載のぶん柔軟性が高いのが利点です。重量はCloudmonsterと同等レベルなので、より安定・滑らかなMaxか、より反発感のあるMonsterか、といった違いになります。
On Cloudeclipse(前作)との比較: CloudeclipseはCloudsurfer Maxの直接の前身モデルです。私はCloudeclipseを所有していないため伝聞になりますが、多くのレビューを総合するとCloudeclipseは非常に軽快で楽しいシューズだったようです 。On=硬いというイメージを覆す、弾むような乗り心地が好評でした。ただし欠点もいくつか指摘されており、なかでもSpeedboardの騒音問題やアッパーの余裕があり過ぎた(ボリュームが大きい)点が挙げられていました 。Cloudsurfer Maxでは前述の通りSpeedboardを廃し、アッパーも若干タイトめに調整されています 。その結果、「Cloudeclipseよりアッパーが洗練されフィットが向上し、不要なノイズもなくなった」と評価されています 。一方、クッションフィールに関してはCloudeclipseの方が柔らかく滑らかだったという声もあり、Cloudsurfer Maxは前作より安定性や反発を得た代わりに、ふわっとしたソフトさは後退したとも言えます 。価格は偶然にもCloudeclipseとCloudsurfer Maxどちらも定価$180(日本価格23,100円)で据え置かれています 。総合すると、Cloudsurfer MaxはCloudeclipseの長所(楽しいライド感)は一部犠牲にしつつも、欠点だった部分を改善しより実用的に進化したモデルと位置付けられます。
HOKAのクッションモデルとの比較: マックスクッションと言えばHOKA(ホカ)を思い浮かべる方も多いでしょう。HOKAの代表的厚底モデルBondi(ボンダイ)や最新のClifton(クリフトン)シリーズとCloudsurfer Maxを比べると、その性格の違いがはっきりします。BondiやCliftonは柔らかく足が沈み込むようなクッションと、極厚ソールによる最大級の衝撃吸収が特徴です。それに対しCloudsurfer Maxは**同じクッション系でも「沈み込みより安定感」**を狙った味付けです。実際、Cloudsurfer Maxのソール高37mmはHOKA Bondi 8の約39mmやClifton 10の約33mmと近い数値ですが、体感クッション感はBondiほどプルプルではなくもっとしっかり硬めに感じます。HOKAが「柔らかいマシュマロクッション」なら、Cloudsurfer Maxは「引き締まった安定クッション」と表現できそうです。ソールの接地面積もCloudsurfer Maxの方が広く、着地時の安定性では勝っています。ただし超長距離での足の保護という点ではBondiの方が疲労軽減効果が高いかもしれません。
NikeのZoomXフォーム搭載モデルとの比較: Nikeには厚底クッション系のZoomX Invincible(インヴィンシブル)やクッション性重視のVomeroなどがあります。Nike ZoomXフォームは非常に軽量で柔らかくバウンシー(弾む)な特性で知られ、Invincibleは「雲の上を跳ねるような」走り心地と評されます。それに対しCloudsurfer Maxは、そもそも素材が異なるとはいえ全くキャラクターが逆です。ZoomXが「とにかく柔らかく沈み込む」タイプなら、Helion+CloudTecのCloudsurfer Maxは「適度に跳ね返る硬め」の乗り味です。私の主観では、ZoomX Invincibleの方が初心者でも「すごいクッション!」と感動するインパクトがありますが、長時間走ると柔らかすぎて逆に足が疲れるという声も聞きます。その点Cloudsurfer Maxは足を守りつつも程よい硬さで安定しているため、ZoomXシューズの柔らかさが合わない人にはフィットするでしょう 。ただし、ZoomX系は重量が軽いものが多く、その点ではCloudsurfer Max(約290g)はInvincible 3(約280g)より若干重いです。スピードを出す用途ならNike系に軍配ですが、安定した日常ラン用途として比べれば甲乙つけがたい部分もあります。
その他の競合(BrooksやASICSなど): 2025年現在、各社から「Max」の名を冠したクッションモデルが登場しています。BrooksのGlycerin 20/Max、ASICSのSuperblast、PumaのMagnify Nitroなどがその例です 。これらはいずれもヒールで40mm前後という超厚底シューズで、Cloudsurfer Maxよりスタックが高くよりソフトなクッションを備えます 。とりわけASICS Superblastは軽量かつ弾む走りで評判ですが、価格も高価ですし安定性ではCloudsurfer Maxに劣ります。またBrooks Glycerin Maxは安定性に優れクッションも極厚ですが重量が増しています。Cloudsurfer Maxはそうした「極端な厚底シューズ」と比べると控えめな厚さとしっかりした安定感が特徴で、ちょうど中間的な立ち位置と言えるでしょう。「Max」という名前からイメージするほどの”怪物シューズ”ではなく、実用性と走りやすさを両立した厚底トレーナーというポジションです 。
初心者からプロまで: Cloudsurfer Maxは誰におすすめ?

最後に、ランナーのレベルやタイプ別にCloudsurfer Maxの適性を考えてみます。初心者、趣味ランナー、中上級者、競技志向ランナーそれぞれに向けて、このシューズがおすすめできる点・注意すべき点をまとめます。
- ランニング初心者・ビギナー: Cloudsurfer Maxは初心者にも十分おすすめできます。まずクッションが厚く安定感があるので、ランニングフォームが未熟でも足や関節への衝撃を和らげてくれます。実際のところクッションの硬さゆえに極端な柔らかさは感じませんが、その分着地時に足がブレにくく、怪我のリスク軽減に寄与します 。またアウトソールのグリップや安定性が高いので、ゆっくりしたジョギングからウォーキングまで幅広く活用可能です。Onのシューズはおしゃれなデザインも魅力で、普段履きやジムシューズとしても違和感がないため、ランニング以外のシーンでも使い回せる点は初心者にとって経済的メリットでしょう。注意点は価格がやや高めなことです(エントリーモデルと比べると割高感があります)。しかし、品質とデザインに価値を感じるなら買って損はない一足です。実際、市場では同カテゴリーのシューズが16,000円前後で買える中、本モデルは23,100円と高価格ですが、それは**Onブランドの付加価値(いわゆる「On税」)**と割り切る必要があります 。
- 市民ランナー・中級者: フルマラソン完走経験がある、市民ランナー中級者層にとってもCloudsurfer Maxは頼もしいトレーニングパートナーになり得ます。日々のジョグやLSD、ロング走において、しっかりしたクッションと耐久性で足を支えてくれます。特にリカバリーラン(回復走)やイージーランで効果を発揮するでしょう 。前日のハードトレーニングで脚が疲れている時でも、このシューズなら過度に沈み込まない安定クッションのおかげで安定して走れました。逆にスピード練習の日には他の軽量シューズを使い、用途によって履き分けるのが理想的です。ただ、中級者の中にも「もっと柔らかいクッションが好み」という方もいるでしょう。その場合、Nike InvincibleやNew Balance Fresh Foam Moreのような柔らか系も検討ください。一方、「最近の靴は軟らかすぎて苦手」と感じているランナーなら、このCloudsurfer Maxの踏みごたえあるクッションはきっと気に入るはずです 。
- 上級者・競技志向ランナー: サブ3やウルトラマラソンなどを狙う上級者にとって、Cloudsurfer Maxは主にロングラン用のトレーナーとして有用です。スピード練習やレース本番ではおそらくカーボンプレート搭載の高速シューズ(例えばOn Cloudboomシリーズや他社の厚底レーサー)を履くでしょう。しかし、日々の距離稼ぎや疲労抜きジョグで足を守りつつ鍛えるシューズとして、本モデルは役立ちます。特に脚筋力の強い上級者が履くと、Cloudsurfer Maxの硬めクッションをしっかり踏み込んで推進力に変えられるため、ある程度のペース走までこなせる器用さもあります。反面、サブ3クラスのランナーがこのシューズでビルドアップ走やインターバル走をすると、シューズの重さ・硬さが負担になる可能性もあります。そのため上級者ほど用途を割り切り、**「あくまでベーストレーニング用の一足」**と位置付けると良いでしょう。また、フルマラソンをCloudsurfer Maxで走り切ることも不可能ではありませんが、勝負タイムを狙うならやはりレーシングシューズの方が有利です。ただしウルトラマラソンやトレイルの後半など、足が疲労困憊した状況ではこの安定感が武器になるかもしれません。
- 体格の大きなランナー・脚への負担が気になる人: 体重が重めのランナー(いわゆるClydesdaleランナー)や膝・腰への衝撃を極力減らしたい人にもCloudsurfer Maxはおすすめです。前述のように、重めのランナーほどこのソールのクッションをしっかり引き出せる可能性があります 。事実、米国のレビューサイトでは「Big Guy Approved(大柄ランナーお墨付き)」との太鼓判が押されていました 。幅広のつくりと安定感、耐久性も相まって、体格の良いランナーでも安心して履ける一足です。サイズも最大33cm(US15相当)まで展開しているため、足の大きい方でも選択肢になります 。実際「自分は大柄でCloudeclipseが気に入っていた、Cloudsurfer Maxにも興味がある」という海外コメントも見られ、そうした層にしっかり応えている印象です 。
- ウォーキング用途・オールデイユース: 番外編ですが、Cloudsurfer Maxは普段のウォーキングや立ち仕事用のシューズとしても適しています。クッションが沈み込みすぎず安定しているため、長時間立っていても足が疲れにくく、横ブレによる足首の負担も少ないです 。私も散歩や買い物で一日中履いてみましたが、足裏のダルさや足のアーチの痛みは出ませんでした。デザインもカジュアルに履けるため、ランニング以外の利用価値も高いでしょう。
以上をまとめると、Cloudsurfer Maxは幅広いランナー層に対応できる万能型マックスクッションシューズと言えます。特に「安定した走り心地」「耐久性」「オンらしい洗練デザイン」を求める方にマッチします。一方で、とことん柔らかい乗り心地やレースペースでの俊敏性を求める場合は他の選択肢が良いかもしれません。購入の際は自分の好みや用途を踏まえて検討すると良いでしょう。
良い点・惜しい点【総評】
最後に、筆者が実際にCloudsurfer Maxを使用して感じたメリットとデメリットを箇条書きで整理します。
良い点:
- 安定した履き心地: 高いスタックハイトながらソール幅が広く剛性もあるため、着地から蹴り出しまでブレの少ない安定走行が可能です 。横方向のグラつきも少なく、長時間走ってもフォームを保ちやすい印象でした。
- 適度な反発と走行のスムーズさ: CloudTec Phaseクッションが沈み込みすぎない弾性を持つため、ペースアップ時には軽快な反発を感じられます 。ロッカー形状との相乗効果で足運びが滑らかです。
- 快適なアッパーとフィット: エンジニアードメッシュのアッパーは非常に通気性が高く蒸れにくい うえ、足当たりもソフトでストレスフリーです。広めのラスト設計とクッションパッド入りの履き口で履き心地は上々でした。
- 高いグリップと十分な耐久性: アウトソールのラバー配置により、路面をしっかり捉えるグリップ力があります 。耐久性もおおむね300〜500km程度は確保されており、日々のトレーニングのお供として長持ちします。
- スタイリッシュなデザイン: 個人的な好みですが、Cloudsurfer Maxのデザインやカラーリングは洗練されており、普段履きしても違和感のないルックスです。Onらしい高級感が所有欲を満たしてくれます。
惜しい点:
- クッションの硬さ(好みが分かれる): 「マックスクッション」という名前から想像するような柔らかさ・クッション感は控えめです 。特に長距離では脚への衝撃が蓄積しやすく、人によっては「もっと柔らかければ…」と感じるでしょう 。ソフトな乗り心地を求めるランナーにはミスマッチかもしれません。
- シューズ重量がやや重め: 公称約292g(メンズ)という重量は、このカテゴリーでは標準的ですが、スピード練習用途には少し重さを感じる場面があります。特に後半ばててくると足取りが重くなりがちで、「もう少し軽ければ楽なのに」と思うこともありました 。
- 価格が高い: 定価23,100円(税込)は他社の厚底トレーナー(多くは税込1万6千〜1万8千円台)と比べ割高です。Onブランドのプレミア価格とも言えますが、コストパフォーマンスを重視する人にはネックでしょう 。もっとも、それだけの価値がシューズにあるかどうかは感じ方次第ですが、購入のハードルが高い点は否めません。
- シューレースの調整に難あり: 布ループのアイレット構造は見栄えこそ良いものの、締め付けの調整にコツが要るのは前述の通りです 。理想のフィットを得るまで少し手間取る可能性があります。結び目が解けやすいわけではないですが、長い靴紐の処理も含め煩雑さを感じる部分でした。
- 「Max」の割に最大級ではない?: これはデメリットというよりネーミングの問題ですが、昨今の他社マックスクッション(40mm超えの超厚底)と比べると厚さやクッションのインパクトは控えめです 。そのため「Max」という名前から想像すると肩透かしを感じる可能性があります。ただ、逆に言えば極端なシューズではなくバランス型とも言えます。
Cloudsurfer Maxを斜め後ろから。分厚いヒールと幅広の安定したソール形状が確認できる。クッションは硬めだが、その分着地時のブレを抑えてくれる。
まとめ – On Cloudsurfer Maxを履いてみて
実際にOn Cloudsurfer Maxを走り込んでみて感じたのは、「これは好き嫌いが分かれるシューズだろう」ということです。柔らかなクッションに身を委ねるような乗り心地を期待すると、「思ったより硬いな…」と感じるでしょう。しかし、その安定感と適度な反発は一度ハマると癖になる心地よさがあります。私自身、最初は硬さに戸惑いましたが、数回のランで「このしっかり感がむしろ安心できて良い」と感じ始めました。特にOnファンの方であれば、まさに**「これぞOnの履き味」**と納得できるはずです 。
Cloudsurfer Maxは派手さこそありませんが、シューズとしての完成度は高く、トレーニングのお供として頼もしい相棒になってくれます。クッション性能や重量面で最新トレンドの厚底シューズに一歩譲る部分はありますが、そのぶん扱いやすく足との対話ができるシューズだと感じました。長距離を安定して走り込みたい人、オンのデザインやフィーリングが好きな人、そして柔らかすぎるクッションに飽きてしまった人──そんなランナーにCloudsurfer Maxはぴったりフィットするでしょう 。
一方で、柔らかいシューズでないとどうも疲れてしまうという方や、自己ベスト更新のために一秒でも削りたいというレース志向の方には、本モデルより適した靴が他にあるかもしれません。要は自分の好みと目的に合うかどうかです。幸い、Cloudsurfer Maxは店頭やイベントでの試し履き機会も設けられているようなので 、気になる方はぜひ一度足を通してみることをお勧めします。
総じて、On Cloudsurfer Maxは「期待以上に万能で実直なマックスクッションシューズ」。最大限のフワフワ感ではなくとも、ランナーの足を確実に支え、日々の走りを積み重ねる手助けをしてくれる一足だと感じました。私も今後、このCloudsurfer Maxをロング走やリカバリーランのお供としてローテーションに加え、しっかり履き潰すまで使い込むつもりです。その頃にまた見えてくる長期使用での印象もあるでしょうが、現時点では十分満足の★4/5評価を与えたいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。Cloudsurfer Maxの購入を検討されている方の参考になれば幸いです。それでは、良いランニングライフを!
「Soft Wins(柔らかいことは弱さではない)」– Onのメッセージ を胸に、自分に合ったペースとシューズで快適なランを楽しみましょう。
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